Nature Photograph & Essay  里山自然探訪 2004年5月27日号
                                             撮影:神戸市西区/2004年5月15日
ツバメ
 西区は神戸牛の飼育が盛んだから、牛の排泄物の処理も大変なようだ。休耕地は、時折バキュウムカーで運ばれた生々しい糞尿で茶色い池と化す。消毒液と混ざった凄まじい匂いも、数日待てばそこは珍鳥もやってくる絶好の鳥見ポイントに変身するから、強烈な悪臭とはいえ、鳥屋さんは「臭い臭い」などと決して言ってはならない。むしろ感謝すべきか?
  雨上がりの夕刻、幾分臭いの治まった彼の場所にやって来た。すでに乾燥が進み粘土状になった畑地の上を、沢山のツバメが漆黒の羽根を時々藍色に光らせながら乱舞している。畦に茫々と生えたイネ科の雑草の穂の上すれすれを、まさに燕返しで入れ替わり立ち替わり半弧を描き俊敏にアクロバット飛行を繰り返えしている。草にウジャウジャと止まっている牛糞から羽化したヒメフンバエを狙っているのだ。先に草の際を飛んだツバメがハエを飛び立たせた瞬間、後のツバメがすかさず飛び込んで捕獲する。見事な連係プレーの食事風景に暫し見とれてしまう。
 ただ無意味に飛び回り、大きく開いた嘴にたまたま飛び込む餌を口にしているかと思えば、どうしてなかなかの知恵者のようだ。他の野生鳥類にとって最も危険な人家の軒先や都会の駅やビルにまで入り込んで営巣し、雛を狙うヘビやカラス、巣を横取りするスズメなどの天敵を、人の威を借りて避ける巧みな裏技をやってのける鳥だ。人以上に愚かな事などするはずもない。
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