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May.08,2004/トラフシジミ
 日中の気温は28℃で、とても薫風爽やかなはずの5月の上旬とは思えないまるで真夏のような暑さに絶えかねて、ノダフジの藤棚の木陰で一休みした。先週は花の房もまだ40p程度で、風にゆらゆらとたなびくほどに長くなるのを楽しみにしていたが、もうすっかり散ってしまっているのには驚きだ。季節の移ろいがあまりに早いのは、温暖化のせいなのだろうか。
 一心地ついて藤棚を見渡した。葉もすっかり濃緑で、これもすでに夏の気配だ。だらりと垂れた葉の上でトラフシジミが木漏れ日のスポットライトを受けて、褐色の裏羽根は淡い灰褐色の縦縞の帯を輝かせている。幼虫はフジやウツギなどの花や蕾を食べて育つから、この成虫もこの藤棚が生まれ故郷なのかもしれない。年2回、春と夏に羽化するが、同じ親が春に産卵したものが、そのまま成長して夏に羽化するものと、蛹のまま越冬して翌春羽化するものとがあり、珍しい発生をする蝶である。驚くほど早い時期に開花して瞬く間に花を散らしてしまった藤棚で、親が首尾良く産卵して、幼虫も順調に成育できたのか、うだるような日差しですっかり萎え、色あせた落花を見て少し心配になってきた。