山桜の花弁も散り尽くし、蕊や萼までもが落ちてしまう
頃、丘陵のアカマツは天を突き刺すように、真っ直ぐに
新芽を伸ばし始める。これを「若緑」というらしい。その
基部には、ラグビーボールのような雄花が生命の塊を
四方に振りまかんばかりにビッシリと身構えている。
落葉樹の若葉は産毛に覆われた葉をかなり広
げ、山肌
は灰緑色に染められている。所々にコバノミツバツツジ
の薄青
紫の花の塊が、少しく晩春の進行が遅延し、何
だか地味な山肌を飾
ってくれている。暫く登山道を歩め
ばコバノガマズミの白い花や赤
い小さなウニのようなヒ
メコウゾの花が迎えてくれる。薄緑の何とも地味なサルト
リイバラの花を見ていると、鮮やかな金緑色に輝く翅鞘
のアオマダラタマムシが、幾分肌寒い所為かノロノロ歩
いている。コナラの若葉の上のヒメクロオトシブミは、葉
がすっかり開きり、小さな落とし文を造る日を待ちかね
ている気配だ。
山道沿いの細い沢の溜まりを覗くと、曲玉の形をしたカ
スミサンショウウオの卵塊が見つかった。中で10数頭の
幼生が泳いでいる。既に多くは水中に泳ぎ出していて、
遅い初夏もどうやらそこまで近づいたようだ。
(神戸市西区押部谷町木津:2000.4.30)
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