アオダイショウの脱皮                         前ページ トップ 後ページ 
 道沿いの背の低い広葉樹の上にアオダイショウが横たわっていた。体を二つ折りにねじっていて、遠目には捨てられたロープのようだ。
 
近づいてカメラを向けても全く動こうとしない。何だか見慣れた体色に比べると精彩がないように思う。体調でも悪いのかともう少し近づいてその眼を見て驚いた。まるでプラスチックのカバーを填めたかのように薄い青一色ののっぺらぼうで、虹彩も何も無い。どうやらこのアオダイショウ、脱皮が近いようだ。全体に萎びていて、薄灰青色の膜を被せたようなのは、表面の鱗と下の皮膚が剥離し始めているからだろう。

 ヘビの脱皮は口の端から始まるという。口先を木の枝や石などの硬いものに擦って皮を捲り始め、まるでストッキングを脱ぐようにして脱皮する。だから、脱皮殻は裏と表が逆になる。木の枝などで見かける脱皮殻の頭の部分が、裏表になっているのを見て不思議に思った人も多いだろう。要するに、靴下はおろか、上着もズボンも裏表で脱ぎ散らしている行美の悪い人の服の脱ぎ方と一緒と言えば納得がいく。

 ヘビが逆しまに脱皮するのは健全な成長のために当たり前のことだが、大人が靴下を脱皮殻状態のまま洗濯駕籠に放るのはやはりお恥ずかしいことと反省するのである。
                                     〔撮影:2006年9月24日/兵庫県神戸市
ヒメスズメバチの毒針                           
  「トイレにスズメバチがいるよ!」と家内が血相を変えて呼びに来た。
  恐る恐るトイレのドアを少し開けて中を覗くと、ブンブンと凄まじい羽音を立てて天井付近の壁をなぞるように飛んでいる。

 これを退治しないことにはトイレは使用禁止のままだで困るから、早々捕虫網を持ってきて捕獲開始だ。スズメバチがここからから飛び゙出して来たら拙いので、トイレの中で網に収めたいのだが、中に入れば刺されそうだからドアの隙間から網を差し伸べて使うしかない。壁に這うように飛んでいるのを、丸い網の枠で掬うのはなかなか困難な作業で、、背中に汗をかきながらようやく網に収めたのだった。
 
 お気の毒とは思ったが、大事にならぬよう網の中で潰してしまった。このスズメバチをよく見てみると、尻の方が黒っぽくて、やや小振りだ。ヒメスズメバチだった。オオスズメバチに次いで毒性が強い。羽音が凄まじいので、大きさの割に威圧感はなかなかのものだ。
 
 死骸の尻を見ると毒針が飛び出ている。怖い者見たさだ。解剖して毒針を取り出して見ることにした。注射針のように真っすくかと思ったかが、先が少し湾曲している。敵に頑強な脚で取り付いて尻の先を曲げて刺すから、真っ直ぐよりこの形の方がしっかりと刺せるのだろう。
                                     〔撮影:2006年9月20日/兵庫県神戸市
ビロードハマキが派手な訳                     
  最近、雑木林の残る川沿いの道を良く歩く。この残存林で発生した昆虫が林縁に集まって来るからだろう、この近辺では昆虫が割合多い場所だ。このビロードハマキもここで見つけた。

  ハマキガは普通夕方に活動する種が多いが、これは珍しく昼行性。成虫は夏と秋の2回発生して、夏はカエデ類などの落葉広葉樹に、秋はアセビやカシ類などの常緑広葉樹に産卵するらしい。幼虫は葉を数枚ざっぱに綴り合わせた巣を作り、この中で葉を食べながら成長する。秋の幼虫はこの巣の中で越冬するから、秋に親が常緑樹に産卵するのは我が子の冬の暮らしに配慮してのことだった訳だ。
 
  他のハマキガのほとんどは茶系で、近くに止まっていてもなかなか気づかない程環境に溶け込んだ色合いなのに、このハマキガはガは「ここに居ますよ!」と言わんばかりに目立ってる。ハマキガ類にしては随分と派手な色彩だから、見つけるとつい撮影してしまう。

  伊達に派手な模様をしているのではなさそうだ。毒蛾の幼虫に擬態しているか、あるいはテントウムシ類と同様に味が不味いのをしっかり覚えてもらうためではないだろうか。今度見つけたらちょっと囓って確かめてみよう。それと、尻の方が更に目立つ赤なのは、頭がこちらだと鳥などの捕食者に誤認させるためかもしれない。

 この色彩にしても、季節で食樹を変える工夫といい、ビロードハマキはなかなかの知恵者に思えてくる。
                                     〔撮影:2006年9月17日/兵庫県神戸市
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