<里山自然探訪>

ダイコンハムシ(大根葉虫)                    前ページ トップ 後ページ
 菜園に植えているハクサイ、ダイコン、チンゲンサイ、タカナなどの冬野菜がダイコンハムシ(ダイコンサルハムシ・Phaedon brassicae Baly)の虫害に晒されて悲惨な状態である。ハクサイは無数の円形の食痕だらけで、まるで薄緑色のレースのカーテンのような有様である。チンゲンサイやタカナは発芽間もない時期から食害され、葉脈を残してほとんど食い尽くされ、枯れたり、成長が著しく悪くなってしまっている。
 ダイコンハムシ(大根葉虫)は和名で察しが付くとおり、ダイコン、ハクサイなどのアブラナ科の野菜を食害するハムシ科のコウチュウである。成虫は楕円形で、体長が4oほどと小さく、美しく黒藍色の金属光沢に輝き、一見テントウムシに似たスタイルの可愛らしい昆虫である。しかし、見た目と裏腹にダイコン、ハクサイなどの主要害虫なのである。
 昭和30年以前はBHCやDDTなどの残効性の高い農薬の使用で、ダイコンハムシによる虫害は少なかったが、有機農業や低毒性の農薬の使用によって、最近では各地で発生が見られ、かなりの大発生となっている地域も増えているという。
 我が菜園も有機無農薬栽培だから、ダイコンハムシの被害は避けようが無い。成虫を見つけ次第捕獲して退治しているが、手を伸ばす振動や気配を察して、ポロリと地面に落ちてしまう。さらに固くて丸っこい体だから、指で摘むとツルリと滑って逃がしてしまうことも度々だ。幼虫も同様、直ぐにポロリと落ちてしまうから始末が悪い。このような状況で、手作業で完璧に退治するのは到底無理な話だ。
 成虫は年2、3回の発生で、枯れ草や石下などで成虫で越冬した個体が4月頃から活動を開始する。夏場は仮眠し、気温が20℃前になる秋に再び姿を現し、秋に1、2世代発生し、11月上旬に越冬に入る。成虫の寿命は500日にも及ぶというから驚きだ。そして産卵数は約1200個。秋期の卵から成虫までの生育期間は、卵が約5日、幼虫が15日前後、土中に潜る蛹が約12日。この間ほぼ一月という短期間で、卵から成虫になるのである。
 小さな体に似合わぬ成虫の寿命の長さ、驚くべき産卵数と成長の早さ。手で退治する程度の害虫対策でこの虫に通用する訳が無い。有機無農薬栽培はどうにか育った野菜を有り難く頂戴するとうスタンスで無いと、とてもやっておれない。
                               



















(写真左)
交尾姿勢をとる成虫の姿が、ハクサイの葉の彼方此方に見られる。これもまた繁殖ぶりの旺盛さを物語っているようだ。


(写真下)
ハクサイの葉を食べる幼虫。葉に無数の円形の食痕が空けられている。

                                     〔撮影:2009年10月01日/兵庫県神戸市
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