ヒシの花に集まるトビイロシワアリ                             前ページ  後ページ
  花の蜜にアリが集まるのは何も珍しい事ではない。
いや、至極当然の風景である。
けれども、池の中の水の上に咲く花に、翅の無い昆虫
がやって来て
吸蜜しているとしたら、これはもうミステリ
ーだ。

 そう、左の写真はそのミステリー!、と言いたいところ
だが、これは水の引いた岸辺の土の上に咲くヒシの花
にやって来たトビイロシワアリである。だから特別なこ
とではないと思うのだが、このトビイロシワアリにしてみ
ればかなり特異な体験に違いない。

 普段は池の水が岸まであるのあだから、ケシのある
所まで泳いで行かない限り花蜜にはありつけない。こ
の蜜を舐められるのは、丁度ヒシの花期で、しかも上
手い具合にため池の水が抜かれていること。

 満開の花の蜜を求めて自由に飛び回る事など出来
ない翅の無いこのアリにとって、
水上のご馳走に有り
付けるなんてことは珍事だ。花の蜜を地面から歩いて
容易に
ヒシの花にたどり着けるのは、千載一遇の大チ
ャンス。人の目には、「花に集るアリ」などありふれた光
景だが、ヒシに舌鼓を打つトビイロシワアリにしてみれ
ば、一生味わえないグルメな一時なのだ。
         
撮影:2006年9月2日/兵庫県稲美町