ビロードハマキが派手な訳                           
  最近、雑木林の残る川沿いの道を良く歩く。この残存林で発生した昆虫が林縁に集まって来るからだろう、この近辺では昆虫が割合多い場所だ。このビロードハマキもここで見つけた。

  ハマキガは普通夕方に活動する種が多いが、これは珍しく昼行性。成虫は夏と秋の2回発生して、夏はカエデ類などの落葉広葉樹に、秋はアセビやカシ類などの常緑広葉樹に産卵するらしい。幼虫は葉を数枚ざっぱに綴り合わせた巣を作り、この中で葉を食べながら成長する。秋の幼虫はこの巣の中で越冬するから、秋に親が常緑樹に産卵するのは我が子の冬の暮らしに配慮してのことだった訳だ。
 
  他のハマキガのほとんどは茶系で、近くに止まっていてもなかなか気づかない程環境に溶け込んだ色合いなのに、このハマキガはガは「ここに居ますよ!」と言わんばかりに目立ってる。ハマキガ類にしては随分と派手な色彩だから、見つけるとつい撮影してしまう。

  伊達に派手な模様をしているのではなさそうだ。毒蛾の幼虫に擬態しているか、あるいはテントウムシ類と同様に味が不味いのをしっかり覚えてもらうためではないだろうか。今度見つけたらちょっと囓って確かめてみよう。それと、尻の方が更に目立つ赤なのは、頭がこちらだと鳥などの捕食者に誤認させるためかもしれない。

 この色彩にしても、季節で食樹を変える工夫といい、ビロードハマキはなかなかの知恵者に思えてくる。
                                           〔撮影:2006年9月17日/兵庫県神戸市