棘だらけのルリタテハの幼虫                       
  葉を半分ほど喰われたサルトリイバラがあった。きっとこれはルリタテハの幼虫の仕業だ。葉の裏を覗くと案の定幼虫がいた。

 数日前、妻が「裏庭のホトトギスにトゲトゲの幼虫が居たから始末したよ。」と言う。「あ、あ!それはルリタテハの幼虫・・・。」と、貴重な被写体を処分され落胆したばかりだったから、頭の隅に食草のサルトリイバラが気になっていたようだ。林を歩き始めて最初に出会ったサルトリイバラで、いとも簡単に幼虫を見つけ出した。

 C字に体を丸めて葉に止まった幼虫は棘だらけだ。仮に鳥が見つけたとしても、この棘だらけの虫を見つけたら直ぐに食べるのを止めるだろう。でもこれは見せ掛けで無毒だ。激痛を起こすイラガの棘や、痒みを引き起こすドクガの体毛とは違い、ルリタテハの幼虫は触っても何ら実害は無いから、手のひらに載せて観察しても大丈夫である。

 チョウ類にはヒョウモンやキタテハなどのように痛そうな棘を纏った幼虫がいるが、いずれも捕食者を脅すための見せかけの棘だ。だから、少しガサガサする位で触っても全く実害はない。

 ルリタテハの成虫は、翅を閉じている時は木の葉にそっくり。その地味な翅をパッと広げると、濃紺の地に鮮やかな瑠璃色の二本の帯が目を射る。このチョウは、成虫の翅の「隠蔽」、「びっくり」、そして、出来損ないのミサイルより遥かに優れた幼虫の棘による「脅し」と、天敵から逃れるための様々な工夫を持っているのだ。
                                    〔撮影:2006年9月23日/兵庫県神戸市