アオダイショウの脱皮                                 
 道沿いの背の低い広葉樹の上にアオダイショウが横たわっていた。体を二つ折りにねじっていて、遠目には捨てられたロープのようだ。
 
近づいてカメラを向けても全く動こうとしない。何だか見慣れた体色に比べると精彩がないように思う。体調でも悪いのかともう少し近づいてその眼を見て驚いた。まるでプラスチックのカバーを填めたかのように薄い青一色ののっぺらぼうで、虹彩も何も無い。どうやらこのアオダイショウ、脱皮が近いようだ。全体に萎びていて、薄灰青色の膜を被せたようなのは、表面の鱗と下の皮膚が剥離し始めているからだろう。

 ヘビの脱皮は口の端から始まるという。口先を木の枝や石などの硬いものに擦って皮を捲り始め、まるでストッキングを脱ぐようにして脱皮する。だから、脱皮殻は裏と表が逆になる。木の枝などで見かける脱皮殻の頭の部分が、裏表になっているのを見て不思議に思った人も多いだろう。要するに、靴下はおろか、上着もズボンも裏表で脱ぎ散らしている行美の悪い人の服の脱ぎ方と一緒と言えば納得がいく。

 ヘビが逆しまに脱皮するのは健全な成長のために当たり前のことだが、大人が靴下を脱皮殻状態のまま洗濯駕籠に放るのはやはりお恥ずかしいことと反省するのである。
                                           〔撮影:2006年9月24日/兵庫県神戸市