大きなジョロウグモの居る網に2、3匹の小さなクモが止まっているのを見て、クモの親子と思う人も多いのではなかろうか。夏の頃、雄と雌の大きさはあまり変わらないけれど、秋が深まるとその差は歴然。雄の体調は1p前後だが、雌はその3倍近くに成長する。秋のジョロウグモは正しく蚤の夫婦なのだ。
我が家の庭にはクモの巣があちこちに張りめぐらされている。中でも一番多いのはジョロウグモの網だ。廃屋のようで見苦しいけれど、写真の題材用にとクモの巣はみんな放ったままだ。そのジョロウグモの網の一つにコアオハナムグリが網にかかった。「お、これはもしや。」と思ってカメラを構えた。雌が獲物に取り付くと、巣の上にいた雄がやおら近づいて来た。雌の背中に馬乗りになる。直ぐにするりと腹側に回った。そして、交尾に見事成功。
多くの動物の交尾を考えれば、この画像を見て「え、これが交尾?」と思うに違いない。クモ類では、雄の交接器官は口の先の触肢で、雌は腹部下面前方に生殖口があるから、まるで母親の胸元で乳を吸っているようなこの姿こそ間違いなくジョロウグモの交尾の瞬間なのである。
あまりの体長差だから、小さな雄は結構雌に食べられるそうだ。だから、一番の交尾のチャンスは雌の脱皮の最中。この時は雌が無抵抗だからだ。でもこの目の前の雄は、採餌に夢中になり注意が疎かになった隙を狙って上手く交尾に成功したのである。
勝手に掛かった獲物を利用して自力で捕らえた獲物を雌にプレゼントして、雌の気を惹き交尾をするオドリバエなどに比べれば、雌の巣に居候しこそどろのようにて事を為し遂げるこのジョロウグモの雄は何て要領者なんだろうと思う。
〔撮影:2006年9月29日/兵庫県神戸市〕 |
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