私の良く歩く残存林で野生ランを見ることは稀だが、嬉しいことに開花中のミヤマウズラを見つけた。この辺りは土地開発がかなり進み、モザイク状に残っている丘陵地の林は乾燥化が随分進んでいて、帰化植物に占領され在来種の植物は減る一方だから、ミヤマウズラですら珍しい野生植物なのである。
ミヤマウズラはシュスランと同じGoodyera属。シュスランの名は、艶やかな班模様のある織物の繻子に葉が似ることに因むが、この仲間は園芸の世界ではLudisia属、Anoectochlus属、Macodes属などとジュエルオーキッド(Jewel
Orchids)と呼ばれ、主に観葉が目的のランである。
ミヤマウズラの葉も当然美しい。名は、深山に生え(実際には低山に多いが)、葉が鶉の羽の模様をしたランのことで、葉の模様の異なる様々な品種があるという。江戸時代の後期には、「錦蘭」の名で葉に出る班の美しさや珍しさが競われ、『錦蘭品さだめ』など幾つかの紹介本が出版されるほどの栽培熱であったようだ。
私が見つけたミヤマウズラの葉にはほとんど班は無いからとても鶉の羽には見えない。この辺りに僅かに生えているシュンランの花色は大概冴えない緑色ばかり。人が入りやすい山の山野草は、綺麗なものからどんどん堀り採られ、値打ちのなさそうな株だけがやっと残っているのかもしれない。ミヤマウズラは昔から人気の山野草だから、郊外の林では綺麗に鶉班の出る株は望めないということだろう。
〔撮影:2006年10月16日/兵庫県神戸市〕 |
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