<里山自然探訪>

トウダイグサ                    前ページ トップ 後ページ
田んぼの畦や畑の土手に、薄黄緑にほんのりと明るくなった一角がある。
それはトウダイグサの群落である。
トウダイグサの名の由来は、灯台でもあの最高学府でもなく、燈台のことである。
燈台は、蝋燭などを立てる燭台のことと解説した本もあるが、
油皿を乗せる台が正しいようである。
電気が普及する前は、芯を入れた平たい皿に菜種油や鯨油などを張り、
これを明かりにしていたのである。
野の一角が黄色味を帯びて明らみ、ともし火のように見えるから、
上手く名づけた和名だと感心させられる。


黄色っぽい部分は花だと、誰もが思うことだろう。
だが、よく観ると花弁らしきものがない。
油皿に見立てられた輪生した5枚の心形の葉の上方に、
方々に何本が伸びた包葉がある。
その中ほどに、花粉を着けた小さな蕊が数本見えているが、
これが雄蕊というのはすぐ分かるだろう。
さて、雌蕊はどれかといえば、柄の先が丸い玉状になったそれである。
さらに、長い壷状のものも見えていて、これが胚状花序。
その縁の4つの平たい部分は腺体で、濡れたようにみえるのが蜜である。
どうも花の構造の説明がばらばらで伝わりにくいだろうが、
花が尋常な構造ではないのだからこれは仕方がない。
雄蕊も雌蕊も各々1本の花柄で、がくも花弁も退化していて、
数本の花柄の先が蕊になったのである。
花は受粉をするのに必要な最低限のものだけが残ったということだ。
        
            
 さあ、こんな風に雄蕊も雌蕊も、包葉の上に適当にくっ付けただけで
大丈夫なのかと心配になるのだが、
腺体の蜜にはちゃんと小さなハエがやって来ていて、
虫体にはしっかり花粉が着いているから、それは杞憂に過ぎないようだ。
花の心配をするより、しげしげとトウダイグサを触って
観察している手の方がよっぽど気がかりだ。
なぜなら、この葉や茎から出る乳液はフォルボールという有毒成分で、
これが皮膚に触れるとみずぶくれや炎症を引き起こすから要注意だ。
さらには、発ガン物質(発ガンプロモーションの促進剤)を含むというから、
怖い毒草なのである。
不思議な花をしているのは、野草の好きな人を集めるためではなく、
省エネで効率よく虫を寄せる工夫なのですから。念のために!

                                     〔撮影:2011年4月/兵庫県神戸市
                 
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